老後資金は一体いくら必要なのか? 2,000万円? 3,000万円?
こうした議論がSNSやメディアを賑わせる一方で、「そもそも老後ってどんな生活なのか?」と、具体的なイメージを持てない方も多いのではないでしょうか。
じつは、老後は一枚岩ではなく、65歳から90歳前後まで“30年にわたるライフステージ”なのです。この長いセカンドライフを、同じようにお金を使って乗り切るのは非現実的。
本記事では、老後を「前半」と「後半」に分けて考える資金戦略の重要性を、資産運用・生活防衛の視点からわかりやすく解説します。
老後は「現役引退の次」ではない
人生100年時代と言われる今、65歳からの人生は30年以上あります。かつては「定年=余生」だった時代もありましたが、今や65歳は“新たなスタートライン”です。
たとえば、以下のようにライフスタイルや必要資金は大きく変化します。
年代 | 状態 | ライフスタイルの傾向 |
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65~74歳 | 比較的健康・行動的 | 旅行・趣味・副業など積極的に活動 |
75~84歳 | 徐々に支出抑制へ | 健康維持・見守りや医療に関心移行 |
85歳以降 | 支援・介護が必要な場合も | 医療費・介護費の比重が増加 |
つまり、老後は一括で「貯めておけば安心」ではなく、使い方の戦略が求められる時代なのです。
老後前半(65〜75歳):“今しかできないこと”に資金を投じよう
定年後すぐの10年は「アクティブ・リタイアメント」とも呼ばれる期間。健康面も安定していて、時間にも余裕があるため、これまで我慢していた趣味や旅行、学び直しに挑戦する方も増えています。
【戦略ポイント1】経験にお金を使う「投資的消費」
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世界一周クルーズに挑戦!
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ワインスクールや楽器の習い事
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孫との思い出旅行
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NPOや地域活動で社会貢献
「使わずに残す」より「自分に還元する」ことで、人生の満足度が大きく変わるのがこの時期です。
【戦略ポイント2】インフレ対策も考慮した投資継続
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資産の一部を国内高配当株やインフレ耐性のあるETFに
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NISAの成長投資枠で、長寿化に備える追加運用を
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旅行費などの短期資金は、個人向け国債や流動性資産で確保
今は「使う」時期であると同時に、「備える後半」に向けた資産設計も意識しておきたいところです。
老後後半(75歳以降):生活防衛フェーズへの移行
後期高齢者に突入すると、支出の質が大きく変わります。最も大きいのは、医療費と介護費の増加です。
【戦略ポイント3】資産の守りを固める
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価格変動の大きい資産(外国株やグロース株など)は段階的に縮小
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安定収入を得られるJ-REITやインカム型ETFへのシフト
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必要資金3~5年分を現預金や短期国債で確保
「何が起きても慌てずに対応できる」準備が、老後後半の安心につながります。
【戦略ポイント4】公的支援を知っておく
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高額療養費制度で医療費の自己負担軽減
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介護保険の活用で在宅支援を充実
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成年後見制度の検討(判断能力の低下に備える)
NISAやiDeCoの「出口戦略」も大切です
運用で積み上げた資産も、老後でどう取り崩すかによって効果が大きく変わります。
【NISA】
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非課税枠を活かしつつ、前半は資産成長に活用
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後半に向けて安定型のETFや債券型商品に移行
【iDeCo】
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一時金と年金受取の税制メリットを比較
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退職金との受取タイミングを調整して控除額最大化
ただ貯めるだけでなく、「いつ・どのくらい・何のために使うか」を明確にすることが重要です。
セカンドライフは「前半」と「後半」で設計せよ
若い頃に立てる老後資金の計画は、ざっくりしたもので構いません。しかし、年齢を重ねるにつれて、
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生活の質
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支出の性質
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健康状態
が大きく変化するため、「一度決めた老後資金計画のまま突っ走る」のは危険です。
だからこそ、「老後前半は自分らしく使う、後半は安心して暮らす」
この二段階の使い方を意識するだけで、老後の資金設計はぐっと柔軟で納得のいくものになります。
まとめ:人生100年時代の知恵は“二刀流”の老後資金管理
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老後資金は「貯め方」だけでなく「使い方」も重要
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65~75歳は“楽しむお金”、75歳以降は“守るお金”
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分散投資と出口戦略を組み合わせることが安心へのカギ
人生100年時代のセカンドライフを豊かに過ごすために、あなたもぜひ「老後前半・後半」の視点で資産計画を見直してみてください。